逃れられると思った
ついにギャルの指導係が終わった。
とは言っても、仕事を始めて2週間で、教えた作業は全てできるようになっていたので、残りの2週間は、僕の名前をただ教えるだけだった。努力の末、なんとか名前を覚えてくれたけど、僕のあだ名はいつのまにかピアノになっていた。
小さい頃からピアノをやってたからという理由で、ピアノって呼ばれている。2週間かけて名前を教えた意味はなくなった。
ギャルが人前でそう呼ぶもんだから、他の社員の人からもピアノさんって呼ばれ始めてしまった。
まぁとにかくギャルの研修が終わったので、明日からは僕は新しい職場に変わる。ギャルとはちょっと遠いところに行くので、ようやく安寧が手に入りそうだ。
噂によると、新しく設立する職場らしく、他の職場から数人集まって形成されるようで、どんなメンバーになるのか楽しみではある。
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次の日
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夜勤の出勤は、20時半ころになる。
ただ今日は、新しい職場なので、新しい人と顔合わせしておかねば、ということで20時ころに到着した。
まだ誰もきていないみたいなので、職場にある名札かけみたいなところで、どんな人がいるのか、他の人の名前を見ていた。
男の人ばかりな現場なはずだが、左右には女の人の名前があった。ももかちゃん。はぇー、可愛らしい名前の子もいたもんだ。と思って見ていたら、後ろから、ももかちゃんの名札を取り上げた人が低い声で言った。
「おはようございます」
我愛羅だった。嘘だろ。我愛羅の名前、ももかって言うのかよ。かわいいのやめて。
しかも早めに出勤するのやめて。ギャルなのに。真面目なのやめて。
「おはよ、同じ職場なんやね」
「それな」
いつも通りの低い声で、それな、っていう我愛羅は、今日も目の下にクマを作っている。こういうメイクなんだろうか。それとも本当に寝不足なんだろうか。あるいは、我愛羅リスペクトなんだろうか。
まぁそんなことはどうでもいいのだが、今日から我愛羅と一緒に仕事するということが判明した衝撃で、他の人の自己紹介はほぼ頭には入らなかった。
ギャル去れど他のギャル現る。
帰りは3人で歩いて帰った。