ロードオブザピンポン

こんにちは、とけいです。

 

スポーツは、野球とサッカーが得意です。野球は、2番セカンド、送りバントマン。サッカーは、ライトウィング。器用なヘルプマンな人生でした。

テニスもやります。ダブルスで都内の大学サークル大会を荒らしていました。シコラーです。

 

eスポーツは、30歳を超えてから始めました。コントローラーやヒーラーが多いです。

 

どうやら一貫して、主人公というよりサポーター寄りの役割をまっとうしているようです。

 

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うちの寮には、タイからの実習生たちも暮らしていて、いろんなところにタイ語で文字が刻まれている。

僕も東南アジアに10年近くいた手前、多少のタイ語には対応できる。トイレ、アイロン、食堂、自転車、ゴミ捨て場、ここら辺のタイ語は、タイ人と同じように理解できる。

寮にいるタイ人は、日本語がN4程度しか喋れないので、複雑な会話はできない。

風呂場は大浴場になっているが、恥ずかしさからか、パンツを着衣したまま風呂に入ろうとするやつがいるので、さすがにアレかなと思って日本語で注意すると

ฉันไม่รู้ว่าคุณกำลังพูดถึงอะไร」

とか言われたらする。文化の違いを教えていくのも大変だ。

 

 

そんなタイ人たちが、レクリエーションルームで10人くらいで騒いでいた。

これまで立ち入り禁止だった寮のレクリエーションルームが解禁となり、そこにあった卓球台やトレーニング器具などの使用が許可されたそうなのだ。

寮でタイ語が少しわかる日本人がいるのは、タイ人の中で広がっているので、通りかかった僕を見ると手を振ってくれる。僕はいつも天皇陛下の如く穏やかな表情で手を振りかえしている。

しかし今回は卓球をやっていたので、僕の方から話しかけに行った。

สวัสดี คุณสบายดีไหม」

 

(ここから先は日本語に翻訳されます)

 

「うぇーい、元気?」

「おお、とけさん、卓球やる?」

「ええやんええやん、やらせてや」

「負けた人が交代な」

 

とかいう会話をして、僕は静かにラケットを握った。

 

思えば、1vs1で戦うことが、これまで少なかった。いつも誰かのためにサポートをして、誰かが輝くために日陰にいた。

今日くらいはいいよな。自分のために戦っていいよな。

 

「こいよ」

「ほう、とけい、経験者か」

庭球だがな!!」

 

タイ人のWangが、そっと左手に乗せた白球を真上に飛ばした。卓球のサービスは、16cm以上高くあげないといけない。ゆっくりと落ちてくる白球に、赤いラバーが強く打ち付けられる。

刹那、青い卓球台の上を跳ねる打球が、私の眼前に迫る。素早く回り込み、打球の下に潜り込んだ。大きく右腕を後ろに回し、右足を曲げて白球を見つめる。

「ここだ」

白球の側面を、赤いラバーで擦り上げると、するどいスピードがかかってWangより大きく左側に曲がっていく。

「こ、これは…!」

気づくのも束の間、打球はすでに卓球台に叩きつけられ、壁に跳ね返っていた。

「フィフティーンラブだ」

「いやそれテニスやん」

 

 

というのは冗談で、普通にわいわいきゃっきゃと卓球を楽しんだ。なんならタイ人5人をフルボッコにして、「もう辞めて」って言わせたくらいには強かったわ僕。

 

楽しませるとか接待とかまったく無しにしてエゴなプレイで遊んだ、おとなげのない33歳の出勤前。